賃貸物件の立ち退きを求められたら?立ち退き料の相場と交渉術
立ち退きとは
「立ち退き」とは、賃貸物件の貸主(大家)が借主(入居者)に対して退去を求めることです。契約期間中でも、契約更新のタイミングでも発生します。
重要なのは、借主は一方的に退去させられることはないということ。借地借家法により、借主の居住権は強く保護されています。
立ち退きが発生する主なケース
- 建物の老朽化による建て替え
- 大家自身の使用(自己使用の必要性)
- 再開発・都市計画による取り壊し
- 大規模修繕で入居継続が困難
- 借主の契約違反(家賃滞納・用途違反等)
正当事由とは何か
借地借家法28条では、貸主が契約更新を拒絶する(=立ち退きを求める)には「正当事由」が必要とされています。
正当事由の判断要素
| 要素 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 貸主の使用の必要性 | 貸主が自ら使用する事情 | 自己居住・事業使用 |
| 借主の使用の必要性 | 借主がその物件に住み続ける事情 | 通勤距離・子供の学区・高齢 |
| 建物の状況 | 老朽化の程度・耐震性 | 築40年以上・耐震不適合 |
| 立ち退き料の提供 | 正当事由を補完する金銭提供 | 家賃数ヶ月分の支払い |
ポイント:「老朽化」だけでは正当事由として不十分な場合が多い。貸主の使用の必要性と借主の事情を総合的に判断し、不足分を立ち退き料で補うのが一般的な流れです。
立ち退き料の相場
| ケース | 立ち退き料の相場 | 備考 |
|---|---|---|
| 一般的な居住用賃貸 | 家賃の6〜12ヶ月分 | 最も多いパターン |
| 高齢者・長期居住者 | 家賃の12〜24ヶ月分 | 移転の困難さが考慮される |
| 正当事由が弱い場合 | 家賃の12〜36ヶ月分 | 貸主都合が強いほど高額 |
| 借主に契約違反がある場合 | 0円(立退料不要) | 家賃3ヶ月以上滞納等 |
立ち退き料に含まれるもの
- 引越し費用:実費(10〜30万円程度)
- 新居の初期費用:敷金・礼金・仲介手数料(家賃3〜5ヶ月分)
- 家賃差額の補償:新居の家賃が高くなる場合の差額(1〜2年分)
- 慰謝料的要素:生活の支障に対する補償
計算例:家賃8万円の物件 → 引越費用20万 + 新居初期費用32万(家賃4ヶ月分) + 家賃差額補償12万(月1万×12ヶ月) = 64万円(家賃8ヶ月分相当)
立ち退きを拒否できるケース
拒否が認められやすいケース
- 正当事由がない(大家の都合だけ・「売りたいから」等)
- 立ち退き料の提示がない、または著しく低額
- 契約期間中で更新時期ではない(定期借家契約を除く)
- 借主が高齢者・障害者で移転が著しく困難
- 代替物件の提示がなく、周辺に同条件の物件がない
拒否が難しいケース
- 家賃を3ヶ月以上滞納している
- 無断転貸・又貸しをしている
- 用途違反(居住用を事務所にしている等)
- 建物が倒壊の危険があるレベルの老朽化
- 定期借家契約で契約期間が満了
立ち退き交渉の流れ
- 通知の受領:大家・管理会社から文書で立ち退き要請を受ける
- 理由の確認:「なぜ立ち退く必要があるのか」を書面で質問
- 条件の確認:退去期限・立ち退き料・代替物件の有無を確認
- 検討期間の確保:「検討するので○週間ください」と回答(即答しない)
- 条件交渉:立ち退き料の金額・退去期限・引越し費用の負担を交渉
- 合意書の作成:条件が決まったら必ず書面化(口約束は危険)
- 退去の実行:合意書の条件に従い退去・立ち退き料の受領
交渉で押さえるべきポイント
絶対にやってはいけないこと
- 口頭で「出ます」と即答する(撤回が困難になる)
- 書面なしで退去に合意する
- 立ち退き料を受け取る前に退去する
- 大家に脅されて無条件で承諾する
交渉を有利にするコツ
- すべてのやり取りを書面(メール)で行う
- 「正当事由の具体的な根拠を教えてください」と質問する
- 自分の居住継続の必要性を具体的に伝える(通勤・学区・介護等)
- 相場の立ち退き料を提示し、根拠を示す
- 退去期限は余裕をもって交渉する(最低6ヶ月〜1年)
弁護士に相談すべきタイミング
- 立ち退き料の金額に大きな開きがある(提示額が相場の半分以下)
- 大家・管理会社が「出なければ訴える」と脅してきた
- 定期借家契約か普通借家契約か分からない
- 立ち退き通知から1ヶ月以内に出ろと言われている
- 自分で交渉する自信がない・精神的に負担が大きい
弁護士費用の目安:着手金10〜30万円、成功報酬は獲得した立ち退き料の10〜20%が一般的。法テラス(0570-078374)で無料相談も可能です。
よくある質問
Q. 6ヶ月前に通知すれば無条件で立ち退かせられる?
いいえ。6ヶ月前通知は「更新拒絶の要件」の一つに過ぎず、正当事由がなければ立ち退きは認められません。
Q. 立ち退き料に税金はかかる?
個人の居住用物件の場合、立ち退き料は原則として「一時所得」に該当し、50万円の特別控除があります。ただし高額の場合は確定申告が必要です。
Q. 定期借家契約の場合はどうなる?
定期借家契約は期間満了で契約終了。立ち退き料は法的に不要ですが、交渉で引越し費用程度を出してもらえるケースもあります。
Q. 大家が「建て替える」と言うが本当か分からない
建て替えの具体的な計画書・工事見積り・スケジュールの提示を求めてください。口頭だけの場合は正当事由として弱い可能性があります。
筆者からのアドバイス
立ち退き問題は退去費用とは性質が異なりますが「住居に関する権利を守る」という点で共通しています。筆者は退去費用710,300円を148,750円に減額した経験がありますが、交渉の基本は同じ。「書面で根拠を求める」「相場を把握する」「専門機関に相談する」の3ステップが鍵です。
まとめ
賃貸物件の立ち退きを求められても、即答は禁物。正当事由の有無を確認し、立ち退き料(家賃6〜12ヶ月分が相場)の交渉を行いましょう。すべてのやり取りは書面で行い、不安な場合は弁護士(法テラス0570-078374で無料相談可能)に早めに相談してください。
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※借地借家法28条および関連判例に基づく情報です。個別の事案は弁護士にご相談ください。
参考:国土交通省ガイドライン|法テラス:0570-078374|消費者ホットライン:188